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[コピーレフトとオープンソース]

 マイクロソフトは、パソコンの台頭に合わせて成長してきた企業です。
 でも、それ以前からコンピュータに関わってきた人たちがいました。
 主に大学の研究室でコンピュータを研究していた人たちです。
 この人たちが、初期のハッカーになりました。

 大学では、研究成果は無料で公開するのが基本です。論文を出版するからと言って、高額の閲覧料をとる研究者はいません。そんな事をしたら、自分の研究を誰も評価してくれないからです。

 これは、プログラムも同じでした。研究で作成したプログラムは、誰でも自由に利用できたのです。コピーするのも改造するのも自由でした。ほとんどの場合、ソースコードも付属していました。そうでないと、もしもプログラムが動かなかった場合に修正できないからです。ただし、これはコンピュータを使う人がごく少数だった時代の話です(*1)。

 でもパソコンの登場で、状況は一変しました。
 文書を書いたり、計算したり、ゲームをしたり、普通の人が、誰でも普通にパソコンを使う、そんな時代になったのです。

 マイクロソフトをはじめとする多くのソフトウェアメーカーが、パソコン用のプログラムを発売しました。 このとき著作権を主張してソースコードを守りつつ、バイナリーコードだけを商品化して大もうけしました。どのくらい大儲けしたかというと、ビル・ゲイツさんが世界一の大金持ちになった事は、皆さんご存じのとおり。

 ハッカーの中には、これが気にくわない人がたくさんいました。ビル・ゲイツが大金持ちになった事ではありません。プログラムを自由にコピーできない事、そしてソースコードを見れない事が、彼らの流儀に反したのです。コンピュータが世の中に広まることは、彼らにとってもウレシイ事ですが、
「ソースコードがなかったら、不具合があっても直せないし、もっと良い機能も追加できないじゃないか」
という訳です。

 ここに、リチャード・ストールマンというハッカーが登場します。
 この世界では、知らない人はいないという存在です。ひげ面で、もじゃもじゃ頭で長髪で、サッカーの元日本代表・ラモス瑠偉選手を太っちょにした感じです(*2)。

 リチャードさんは考えました。
「ソースコードを公開するコトは、コンピュータを使いやすくするために、とっても重要だ。でも、ソースコードの著作権を放棄して、公開するだけじゃダメなんだ。そのソースコードを他の人が改造して、それに著作権を主張されたら、全部無駄になっちゃうじゃないか」

 そこでリチャードさんは、こんな作戦を思いつきました。

プログラムを作ったら、ソースコードを公開する

このソースコードの著作権は放棄しない

でも、改造したり配布するのは自由(Free)だヨ

ただし改造したソースコードは、同じようにするコト!

 つまり改造版のソースコードも、同じように改造配布が自由で、「ただし改造したソースコードは、同じようにするコト!」という条件を付けるのです。だから、この改造版の改造版も、同じ条件を付けなくてはいけません。それがずーっと続くのです。
 この作戦を、著作権(CopyRight:コピーライト)をもじって、コピーレフト(CopyLeft)と名付けました。Right(右)とLeft(左)をかけてるんですナ。(*3・*7)。
 でも、リチャードさんは大まじめです。
 これをGNUプロジェクトと名付けて、実際にこういうソフトをいくつも作り、それを支援する団体を結成しました。また、コピーレフトの定義を弁護士に読んでもらい、ちゃんとした法律文書にして、GNU パブリックライセンスとして公開しました(*4)。このライセンスは、GPLと呼ばれています。

 こんな作戦がうまく行くんでしょうか。
 実は、大成功をおさめたのです。

 例えば、Linux(リナックス)というプログラムがあります。
 これは、リーナス・トーバルズというフィンランドの大学院生(当時)が、インターネットで仲間を集めて開発したOSです。一般ユーザーはあまり使いませんが、コンピュータのプロフェッショナルの世界では、Windows以上に人気があります(*5)。
 そして、これもコピーレフトされたプログラムなのです。

 さらに、Linuxの開発の特徴は、インターネットを最大限に活用する事にありました。
 インターネットを利用して寄ってたかって開発すると、商用プログラムに負けない性能・品質のプログラムができると言われています。これが、ソースコードをインターネットでオープン(公開)にする「オープンソース」という開発手法なのです(*6)。

 本当を言うと、「コピーレフトすること」=「オープンソース」ではありません。
 たくさんの人がこの点を誤解しています。
 私も、最初にこの解説を書いた時は、勘違いしていました。
 オープンソースでは、改造したソースコードを必ずしも公開する必要はありません。コピーレフト以前に大学でソースコードを公開する時に使われていた使用条件を含んでいるのです。例えば、ある使用条件では、「改造自由ただし、著作権表示は残す事」となっています。このライセンスは「BSDライセンス」と呼ばれて、今でも多くのソフトウェアで利用されています。Ver2.0では、この点を修正しました。

 オープンソースのライセンスについては、もうひとつの解説で詳しく取り上げています。

「オープンソースって何だろう」http://oooug.jp/start/open/open.html

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脚注

*1:そのころは、大学の研究所や大企業にしかコンピュータはありませんでした。
それにコンピュータは、ものすごく高価でした。まだ、パソコンが登場する前の話です。

このあたりの話については、次の図書を参考にしています
「ハッカーズ」(スティーブン・レビー:工学社) (Amazon.comへのリンク

*2:Googleでイメージ検索すると、彼の写真を見ることができます。
http://www.google.com/

ただし似てるのは、ヘアスタイルだけかもしれません
元阪急ブレーブスのアニマル選手という説もあります(だからヘアスタイルだけだって)

*3:「コピーレフトって何?」
http://www.gnu.org/copyleft/copyleft.ja.html

*4:「GNUプロジェクトの考え方」
http://www.gnu.org/philosophy/philosophy.ja.html

リチャード・ストールマン(Richard M. Stallman) インタビュー
http://www.hotwired.co.jp/ (hotWIRED

*5: リーナス・トーバルズ(Linus Torvalds) インタビュー
http://www.hotwired.co.jp/matrix/9709/5_1.html (hotWIRED

参考図書:「それが僕には楽しかったから」 (Amazon.comへのリンク

*6:オープンソースの開発手法については、次の解説が詳しい
「伽藍とバザール」 http://cruel.org/freeware/cathedral.html

 

*7:ユーザー会のマーケMLでのレビューに際し、樋口さんから『個人的には、leftはleaveの過去分詞でもあるので、著作権を保持している(Public Domainではない)と言う意味もかけているという点の方が、右・左よりもシャレてると解釈してきましたが・・・考え過ぎかもしれない・・・』というコメントを頂きました。
また無津呂さんから『そのほかに、いわゆる右翼・左翼の左 -革命- の意味も持っているという説もあります。(RMS自身がそう発言したという話は聞きませんが) 事実、GNU の活動は文字通りに革命を起こしたのはご存知のとおりです。』というコメントを頂きました。
非常に面白いと思い、ja.oooにこの文書を移した際のVer2.00では、「Leave(放棄する)の過去分詞(Left)でもあるんでしょう」という一文を書きました。
ここへ、slashdot.jpの匿名氏より『ここの「Leave(放棄する)の過去分詞(Left)でもある」に違和感を覚えた。この場合のLeftは「(著作権が)残されている、放棄されていない」という意味に捉えないとおかしいと思う。』『Leave(放棄する)という訳がそもそも間違いではないかと。普通は「残す」「放置する」ですよね。』というご意見が寄せられました(2003-01-18)。自信がないので脚注に移動しました。最初のコメントに対する解釈が間違っていたかも知れません。「複製がどこに行っちゃっても良い」ではなく「Copy(-Right)が残してある」ってことなのかなぁ。人のギャグが理解できないと、オバカにしか見えないですね。

 


作成者:catch
$Id: intro_04.html,v 1.11 2003/12/30 01:02:26 maho Exp $