レビュアーの紹介
氏名: 石井 一夫
パソコン歴: Macintosh15年、Windows5年、UNIX1年、Linux1年
現在の業務の生物情報科学(バイオインフォマティクス)で、大量の数値データの解析やデータベースの構築のために、また、学会での発表などのため に Microsoft Officeを使い倒してきました。特にExcelはかなりのヘビーなユーザーであると自負しています。
現在の職場ではUNIXが導入されていません。そのため、必要に駆られてUNIXライクなOSであるLinuxを導入するようになって1年がたち ました。オープンソースのソフトウェアの使用頻度も高く、特に総合オフィススィートであるOpenOffice.orgは仕事の性格上大変重宝してきまし た。またいろいろなプラットフォームで使えるので、WindowsでMicrosoft Officeを持っていない人には、お奨めソフトとして奨励してきました。Microsoft Officeのエディションによっては、 PowerPointやAccessがなかったりするので、そのような人には非常に重宝します。また、Microsoft Officeにない機能として、PDFファイルが作れるというのは大きなアドバンテージだと思います。とくに、バージョン1.1.0になってから今までと 比べて格段に使い勝手がよくなってきました。
このような非常にすばらしいソフトですので、数ヶ月前よりOpenOffice.orgの日本のユーザー会のメーリングリストにも申し込み、 OpenOffice.orgの情報を収集してきた次第です。
しかしながら、オープンソースであるためか日本語マニュアルなどのドキュメントが少ないという欠点がありました。それでも最近は、 OpenOffice.orgの商用版のStarSuiteのマニュアルやウェブマニュアルが充実してきています。しかし、Microsoft Officeをかなりつかいこんでいるだけに、細かい機能を知りたいということもしばしばあります。また、最近はOpenOffice.orgのユーザー が増えてきて使い方を教えてほしいという場面も多くなりました。しかし、残念ながらこのバージョンのOpenOffice.orgのマニュアルでまとまっ たもの はいままでになく、今回のような「OpenOffice.orgオフィシャルユーザーズガイド」のような書籍の出版を心待ちにしていました。
ぜひ、この書籍のレビューをさせていただき、このソフトとこの書籍のすばらしさを世に伝えることに、少しでも貢献したく、今回のレビュアー募集に 応募いたしました。
レビュー
OpenOffice.org の非常に丁寧に書かれた入門書
1.この本の特徴と背景
OpenOffice.orgはオープンソースで、フリーで入手、使用できるオフィススィートです。Word、Excel、PwerPointと いったMicrosoft Officeで作られた書類との互換性もあり、機能も充実しているため、これらのソフトから乗り換えることを検討できるレベル のソフトだと思います。ワープロ、表計算、プレゼンテーションなどの機能があるほか、HTMLエディター、数式作成ツールなどがあり、PDFファイルの作 成も可能です。
以前のバージョンは日本語の入力に難があり、日本語での使用をあきらめていましたが、バージョン1.1.0 からは格段の改良、修正がなされ日本語での使用にも十分使用に耐えられるようになってきました。多くのオープンソースのソフトウェア全般に言えることなの ですが 、日本語のマニュアルなどのドキュメントが少ないという難点がありました。それでも、いろいろなボランティアコミュニティの努力により、インストール方法 などのマニュアルも充実してきており、ウェブ上に公開されています。また、OpenOffice.orgの商用版であるStarOfficeのマニュアル などの充実で日本語ドキュメントの不足という欠点も解消されつつあるようです。
しかし、いままで、OpenOffice.orgの新しいバージョンに対応した書籍はありませんでした。この「OpenOffice.orgオ
フィシャルユーザーズガイド」はそのような背景の中にあって出版された待望の書籍だと思います。
2.この本を読んでの感想
OpenOffice.orgの開発の経緯、インストール方法からワープロ(Writer)、表計算(Calc)、プレゼンテーション (Impress)などまで、ひととおりの使用法をすべて網羅し、丁寧に解説されています。これにより、いままでにいだいていた OpenOffice.orgを使用するにあたっての、さまざまな疑問点が解消されました。特に13章のCalcとWriterを連携させたはがきへの縦 書き印刷方法の解説は、とてもユニークでしかも実用的な記述だと思います。
2章では、OpenOffice.orgのいい点ばかりを強調するだけでなく現在対応しきれていない問題点を解説しています。この点はこのソフト を使用するうえで大いに参考になります。ただ、それぞれの機能を知る前にいろいろな問題点を述べていても、ピンとこないところがあります。ですので、この 章は、機能の解説がされた章のあとに配置されたほうがよかったのではないかという気がします。
5章のCalcの解説では、セル操作や関数に関する解説が予想していたより少ないのは残念です。関数についてはすべてを網羅するのは不可能なので すが、それでもExcelにあるがOpenOffice.orgにないものなど、Excelとの違いはソフトを使ううえで気になる点なので、きちんと対比 して解説をしたほうがよかったかもしれません。
マクロ言語のOpenOffice.org Basic は、ひとつの章を設けて解説をしてほしかったと思います。
14章のWindows以外のプラットフォームの解説については、特にMac OSでの記述が少ないのが残念です。現在のところOpenOffice.orgの Mac OS XのAqua環境版はまだ出ておらず、今後の課題のようです。しかし、Windows系のマシンはほとんどがMicrosoft Officeが同梱されているのに対し、Macintoshでは同梱されていないので、特にMacintoshに関してはOpenOffice.orgの ようなフリーソフトへの期待が高いと考えています。私の場合も、Classic対応のMicrosoft Officeは必要に駆られて購入しましたが、Mac OS X対応のMicrosoft Officeは購入していません。両方のMac OSに対応するMicrosoft Officeを二つ購入するのはさすがに馬鹿らしい。同じような環境の人は少なくないと思われるので、Macb OS Xに関しては特に解説をしてほしかったと思います。
いろいろ要望はあるのですが、このページ数の制限のなかでこれだけの内容を盛り込めたということはすばらしいことだと思います。
また、最後の16章の、オープンソースとOpenOffice.orgについて述べられた章は、OpenOffice.orgに対する執筆者の思
い入れが込められており読みごたえがありました。また、各章のところどころに執筆者の考え方が込められており納得させられるところも多かったと思います。
3. OpenOffice.orgはMicrosoft Officeに置換できるか
この本を手にしての最大の関心はそこでした。その細かい点については理由は述べませんが、結論として、私の環境ではまだまだ難しいという感想で
す。Microsoft
Office特有のいろいろな機能も使ってしまっており、完全な乗り換えは難しいと考えています。むしろ、両ソフトにはそれぞれの利点や特徴があり、現時
点では両方の機能を生かしつつ使用していくというところに落ち着くでしょう。しかし、OpenOffice.orgの機能もバージョンアップのたびに充実
してきていますので、今後の改良しだいでは将来的に乗り換えるというレベルに達する可能性は十分あることが期待できます。
4.まとめ
この本は、OpenOffice.orgの最初の導入時の入門書としては読者の期待を裏切らないとても優れた本だと思います。しかし、コンピュー
タソフトのマニュアル本に書かれていることは、ソフトウェアでできることのほんの一部であり、使う人の創意工夫によっていろいろな使い方が創造されていく
ものと考えでいます。この本を出発点に、ウェブ上の情報や、
OpenOffice.orgの商用版のStarSuiteのマニュアルなどを参考にして、OpenOffice.orgをどんどん使いこなせるように
なっていければと思います。